¶アートセラピーによる癒し
心が休まる、気持ちがリラックスする、元気が出る、そんな絵や音楽や空間があります。素敵なグッズ、心安らぐ香り、おいしい食べもの、そうしたものによって癒されることもあるでしょう。
でももし、あなたが人間関係や過去の出来事、あるいは自分自身の生き方などについて心にひっかかりがあるならば、そうした癒しは一時的な安らぎや活力を与えてはくれるものの本質的な解決には導いてはくれないでしょう。
アートセラピーでは、あなた自身が色を選び、形を選び、心赴くままに作品をつくります。作品は人に見せるためのものではありません。うまい下手も、どう評価されるかも、そんなことは一切わきにおいて、ただただ思うがままに手を動かしていきます。そして、どんな気持ちだったか、どんなことを思ったか、自由に表現していきます。
恥ずかしければ少しずつでもよいのです。少しずつでも自分自身と向き合って、自分の中から出てくる思いや感覚や感情をちょっとだけでも表現してみる。そうすることで、心の内側でつかえていたものがほぐれ、外へと流れ出ていく糸口がみつかります。
アートセラピーによる癒しは、いわばオーダーメイド。
意味はわからないけれど自分の内側から湧いてくるものを自由に表現する中で、溜まっていた思考や感情のエネルギーが解放され、こだわりが消えていきます。そして心身共に安定し、前向きな気持ちになれます。
作品つくりやできた作品を通して、自分のものの見方や感じ方への気づきが生まれます。これまでとらわれていた考え、人間関係で繰り返してしまうパターン、わけのわからない不安の原因などに対して、「そうだったのか!」と気づくことで、古いパターンから解放されていく。
その人その人に合った形で必要な癒しが訪れます。
大切なことはそれが自分自身の中から出てくるということ。自分の中から生まれた癒しは、時として、過去の自分から抜け出し、本当の自分と出会い、新しい生き方をできるようになる可能性をも秘めています。
アートセラピーの奥深さはそうしたところにあります。
¶グループセラピーの力
多くの場合、アートセラピーは数名から十数名程度のグループで行われます。
はじめは知らない人の中で自分を見せるのは怖いかもしれません。でも、そこに集まる人たちはみな同じ目的や期待を持ってきている人たち。こんなこと考えてるの自分だけかもとか、こんな思いをしているの自分だけかも、と一人で悩んでいたことが、実は同じ体験をしてきたという人と出会う。それだけでも、これまで一人で抱えていた心の重荷が軽くなりますね。
はじめはみんな自分の事で精一杯。でも、力のあるセラピストによって守られ導かれるグループでは、やがてお互いへの思いやりや共感、助け合いの気持ちが生まれてきます。もちろんセラピストによる直接のサポートもあります。安心して自分を出せる場所。グループがそうした場へと成長していきます。
自分一人では行き詰まってしまっていたことも、他者との出会いの中で変化していきます。一般社会の中でそうした理解者をみつけるのは難しいかもしれません。しかしここでは互いに分かり合い励まし合える仲間が生まれます。
¶継続の意味
「グループセラピーの力」でもふれたように、セラピーの場は、少しずつしかし着々と成長していきます。
一回目は顔合わせ、お互いに探り合って終わってしまうかもしれません。
はじめから心を許せるなんて、ある意味セラピー上級者かもしれません。
第一印象の思い込みや言葉足らずによる誤解が解けていくにも時間がかかります。少しずつ信頼を深めることでようやく本当の自分は顔を出します。
気分転換に作品作りを楽しむのであればその場限りでもよいかもしれません。でも、自分と向き合えるようになる、安心して信頼できるようになる、自由に表現できるようになる、そうしたことには少し時間がかかります。そして、そのあとも、気づきは玉ねぎの皮をむくように、一枚一枚次々と訪れるようになります。時間と共にお互い同士への共感も深まっていきます。
もちろん一回の体験で得られるものもあります。でもその先には、豊かで深い世界が広がっています。それは他でもない、あなた自身の中にある奥深い世界です。
¶私もセラピストになれる??
このページを読まれる方は、はじめからセラピスト志望というわけではないと思いますが、可能性について書いてみようと思います。
伝えたいことは“セラピーマインド”
自分が仲間から理解され共感され助けをもらった経験。自分が、何をわかって欲しくて、どこに共感されたくて、どのように励まされることが力になったか。もしその一つ一つを自覚的に体験し感謝をもって受け止めることができたなら、あなたが誰かのために役に立ちたいと思う時の大きなヒントになります。
また、グループの中での心無い発言や、価値観や感じ方の違いに傷ついたとしても、それを自分が誰かにしないための教訓として受け止めることができたなら、あなたは自分自身のためのセラピーを通して、セラピストとしての大切な部分を身をもって体験していることにもなります。
そんなふうな心と眼差しをもって、自分の子どもや家族、仕事で出会うお客様、医療や福祉の場での利用者様や患者様と接することができたなら、苛立ちや不満が優しさと思いやりのこころへと変わっていくことでしょう。
自分が再び傷つくことがあっても、傷ついた自分と向き合うことができたなら、その体験は、自分と他者への愛と思いやりを深める糧と変わるでしょう。
¶体験することから
まずは、安心のできる場において、アートセラピーを体験してみませんか?
その時間が自分にとって楽しみとなるのか癒しとなるのか、それが自分にとってどのように役立つのか、今後どのように関わっていくのか、答えはそれぞれに違います。
はじめはほんの遊び心でかまいません。誰にでもできて楽しめるところから始めてみませんか?
不安なこと、疑問なこと、困っていることなどが出てきたら、何でもお気軽にお聞きください。スタッフが誠意をもって対応させていただきます。